udon_noodles

基本的に誰も得をしない文面

今年聴いた音楽:2026年6月

Bengt Hallberg『Bengt Hallberg』

スウェーデンで録音されたジャズレコード。私が手にしたのは1957年製のアメリカ盤。新聞紙を使ったちぎり絵で北欧の町並みを表現したジャケット。素敵!

www.discogs.com

中立国だったスウェーデンは第二次大戦中もジャズを演奏できたことから、戦後はアメリカ以外では数少ないジャズの先進国に成長。とくに1940年代に起こったクール・ジャズ(ときに抑制的な姿勢を伴い、高度な編曲術による調和のとれた合奏を強く打ち出したスタイル)に敏感に反応。本場アメリカのミュージシャンと互角に渡り合えるミュージシャンを輩出しました。

1950年代に入る頃にはアメリカのレコード会社もスウェーデン録音のジャズ音源を次々買い付けたり、お抱えミュージシャンをスウェーデンで録音させる企画を立てたり、ついにはスウェーデン民謡がジャズの定番曲のレパートリーに入るまでになったのですから(「Ack Värmeland, du sköna=Dear Old Stockholm」)、1940年代後半から1950年代前半にかけて、ジャズ史にはスウェーデンの時代があった、と言っていいと思うのです。

作品の主役であるBengt Hallbergは1940年代から活動するスウェーデン人のピアニスト。1950年にはアメリカでトップクラスの人気を誇ったサックス奏者のスタン・ゲッツと共演したことでその名を知られるようになりました。

あくまでメロディーに忠実に。弾きすぎず。この人のピアノは優しいトーンで品よくスウィングします。「Where or when」は、どことなくギターとヴィブラフォンが抜けたジョージ・シアリング楽団の演奏を聞いているような気持ちに。

ピアノ・ソロ「Little Man You've Had A Busy Day」は、細切れにしたメロディーに次々と複雑な和音をあてがっていくアート・テイタム的テクニックが印象的。音色の優雅さが失われないのはすごい。

youtu.be

「Frantic Blues」では右手を素早く動かしながら、左手を鍵盤の低域に叩きつけて、リズムに勢いをつけています。弦楽器というより打楽器のようなピアノの使い方。バド・パウエル的です。

⋯⋯と、なんとなくモダン・ジャズピアノのショーケースみたいな演奏が並びます。一方で、こうした先人たちのテクニックを取り入れつつも、決してやりすぎないところが印象的。出すぎない、という個性。「I'm Coming Virginia」などは、快適なスウィング感が続くのでどうしても派手にやりたくなるようなところをスッキリと収めています。クール・ジャズのお手本のような抑制のきいた演奏。

実はこのレコード、オランダでも製造されていて、こちらのほうが有名。

閉店後、お客がひけたあとのダンスホールのような空間でピアノを弾くBengt Hallbergの後ろで、モップを持った掃除夫のおばさんが立ったままその様子を見つめている。そんなジャケットが素敵。

www.discogs.com

アルバムのラストを飾る「So Long Blues」が、まさにその雰囲気を音で表しているようで、初めて聴いたときは嬉しくて嬉しくて。

youtu.be

ジャケットと中身の雰囲気がこんなに合致しているアルバムなんてめったに無い!という興奮から、このアルバムの存在は「死ぬまでに手に入れておきたいLPリスト」に直行したものの、やはりこのオランダ盤はあまりにジャケットが素敵すぎるが故か、滅多に巡り会えない。し、アメリカ盤よりも良いお値段してしまうんですね。

持ってる人、すごい。

今年聴いた音楽:2026年5月

インスタントコーヒーと和睦できたかもしれない。子供の頃はインスタントコーヒーが焦げたお湯にしか感じられなくて、すっかり敬遠していたのだけれど。

喫茶店のコーヒーはブラックコーヒーでも美味しいのに、インスタントコーヒーはただ苦いばかりで飲めないのがずっと不思議だった。この違い、最近になってやっと、あれは豆の品種の違いだったのでは?と気づくことができた。

コーヒー屋さんに入ったとき、店主のお兄さんが「きょうはロブスタの焙煎に挑戦してるんです」と、いかにも勝手が違うといった様子で話していたのがきっかけ。

アラビカ種の豆は、風味が豊かなかわりに気候の変化に敏感で育てるのが難しい。一方でロブスタ種の豆は、苦みが強い代わりに気候の変化に強く、比較的育てやすい。ゆえに缶コーヒーやインスタントコーヒーのような大量生産品に多く使用される……と。

「そういう味の豆を使ってるんだ」と分かると、途端に「そういう味」として受け入れることができるようになった。ははあ。自分にとって美味しいものが増えたのは、まあ、良かったね(?)

Rune Öfwerman Trio「Old Spice」

www.discogs.com

1967年頃?にスウェーデンのSonetから発売されたLP。

1950年代後半から1960年代前半にかけて、スウェーデンの「Gazell」レーベルに残されたRune Öfwermaトリオの音源を選集したLP盤。

Gunnar Lundén-Welden率いるコーラス隊と共演したものが楽しかった。このときの音源は、4曲が先にEP形式で発売されていて(Gazell GEP-45)、そのライナーノートによれば、「コペンハーゲンで、トランペッターのErnest Englundが合唱隊と録音するんで、君のトリオもついでに録音するかい?」というプロデューサーの思いつきから始まったらしい。すぐにベーシストとドラマーを捕まえて、「たまたま近くにいた」作曲家/演奏家のGunnar Lundén-Weldenを合唱の編曲者に迎え、勢いそのままコペンハーゲンに乗り込んで録ったというので、演奏の息の合いようにはただただ驚き。

コペンハーゲンではトランペッターのアラン・ボッチンスキーとサクソフォニストのロルフ・ビルバーグが合流。ドナルド・バード作曲の「Amen」が録音された。ゴスペル/黒人霊歌の持つフィーリングを反映させた「ファンキー・ジャズ」ド真ん中の快演。Rune作曲の「Gospel Walk」も同様のフィーリングを活かした演奏。冒頭コーラスが聖歌を強くイメージさせる。

youtu.be

このLP、なんと言ってもドラムがいい。ドラマーのNils-Bertil Dahlanderは、フランスではチェット・ベイカーと共演し、この録音に参加する前はニューヨークでテディ・ウィルソンのトリオに加わっていた実力派。全編にわたって気持ちよく跳ねていて、耳を傾けているだけで自然と体がスウィングしてくる。「Helen's Theme」や「Watcha Gonna Do」のようなゆったりしたテンポの曲では、聴き手の意識が自然とピアノとコーラスに向かう、さりげないアプローチ。聴かせる人だ。

LPには、アメリカンよりアメリカンなサウンドのファンキー・ジャズのほかに、「Satmaras Polska」や、スウェーデンに伝わる民謡「Lapp-Nils Polska」のような、北欧を感じさせる演奏も挟まれている。鍵盤の低音を使った重たいピアノの音とコーラスの組み合わせは、楽曲の旋律と相まってミステリアスな雰囲気。

このコーラス隊との音源は、1965年に米Argoから出た『Cool』というLPでも楽しめる。2000年代に日本でCD化が検討された時期もあったが実現はしていない*1。唯一「Watcha Gonna Do」だけが橋本徹監修のコンピレーションCD『Café Après-midi Rouge』に収められている。

近況:たぶん手首か肘を痛めました。心当たりはあるけど、しかし恥ずかしい。スマホの持ちすぎで痛めたんでないか。いやどうも、恥ずかしい。

今年聴いた音楽:2026年4月

桜の季節ですね。みなさんご機嫌いかがですか。当地の桜は、満開を迎えてから風の強い日が続き、あっという間に散ってしまいましたよ。儚いですね。

で、レコードを買いました。

Núria Feliu「Núria Feliu, Tete Montoliu, Booker Ervin」

www.discogs.com

以前ネットオークションで見かけたときは、落札額が2万円近くしていたので、すっかり諦めていたもの。手に入るとは夢にも思わなかった一枚。

実店舗があるレコード屋さんの、インテルネッツ通販で買いましたので、お店で売ってたときの値札がついてきたのですが、エッこの値段で売ってたものを私がこの値段で買っていいんですか!?となりました。お買い物には夢があります。

歌手のヌリア・ファリウ(Núria Feliu、ヌリア・フェリウとも)が、バルセロナを含むカタルーニャ州を中心に使われるカタルーニャ語という言語でジャズの定番曲をカバーしたアルバム。しかも、テナーサックスでブッカー・アーヴィンがはるばる米国から参加しています。

アルバムのプロデューサーを務めたAlbert Mallofréが書いた作品解説によれば、実は、このアルバムの制作が始まった当初、ブッカー・アーヴィンの参加は予定されていませんでした。

1965年11月当時、ブッカー・アーヴィンはマドリードのジャズクラブ「Whiskey Jazz」に出演していたのですが、クラブのオーナーであるジャン=ピエール・ブルボン(おいしそうな名前だ)の厚意によって、彼を一日だけバルセロナへ招くことができたのだそう。彼はバルセロナへ着くやいなやヌリア・ファリウが何者かさえよく知らないまま録音を始めたわけですが、すごい。とにかくすごい。

冒頭を飾る「El Pais Del Ocells(バードランドの子守唄)」では、テテ・モントリューのキレの良いピアノとずっしりしたEric Peterのベースがすてき。ヌリア・ファリウの厚みのある歌声のあとにブッカー・アーヴィンのテナーソロが来るわけですが、ぶっといテナーが怒涛の勢いで押し寄せます。触発されてバックのピアノやドラムも一層覇気を増しているように感じます。ソロが明けたらテーマをもう一度歌ってスパっと終わる潔さも好き。2分半という短い時間のなかにはちきれんばかりのエナジーがこもっている演奏。

www.youtube.com

歯切れのよいテンポのなかにこれでもかと音を細切れにして詰め込みまくるブッカー・アーヴィンのソロが楽しい「Just Friends」、逆に音の余白をたっぷり活かしたテテ・モントリューのピアノが輝いている「Yesterdays」と、歌なしの演奏も聴きどころが多くて素敵。

中でもお気に入りは「Schoochee Coochee」。アルバム中最速のテンポにテナーのぶっとい音色が乗って駆け抜けていく気持ちよさはちょっと言葉にできません。聴いてくれー!

www.youtube.com

「El Blues D'en Booker(ブッカーのブルース)」は、レコードの再生時間の都合上、最後の1曲は3分以内の演奏で!という制作側の都合に対し、テテ・モントリューが「なら完全即興でやろう」と提案して生まれたもの。なんとピアノレス。ベースとドラムが醸し出す異様な緊張感がクセになってきます。

www.youtube.com

歌が入っていない「Yesterdays」「Just Friends」「Schoochee Coochee」「El Blues D'En Booker」については、ブッカー・アーヴィンがスタジオに入ってから何をやるか決めたといいますから、その演奏の出来栄えの良さには驚かされます。

アルバムの最後を飾る「Soc L'Estrella(Fine And Dandy)」は、イントロのピアノから一同ノリノリであることが伝わってくる演奏。リムショットが気持ちよくリズムを作っていきます。一日限りのセッションでありながら、全員の心が通じ合いアルバムを完成させたことを祝う、ウィニングランのような清々しさを残して終わります。

www.youtube.com

なお、「Tot es gris(Misty)」「Soc Com Un Desmai(Willow Weep For Me)」「De Dalt Estant(Lover Man)」の3曲は、もともとブッカー・アーヴィンの参加が決まる前に制作が進んでいたため、トリオ+歌の編成になっています。

今年聴いた音楽:2026年3月

レコードを買った。西岡たかしの。『五つの赤い風船』という、フォークソングのグループにいた人だとは知ってたけど、フォークには疎いのでスルーしていた。

www.discogs.com

www.discogs.com

でも、このレコードジャケット。水色と白の色合い。ポップな手書き文字とゴシック体のコントラスト。あらゐけいいちみたいな世界観でいいな、内容知らないけど持っておきたいな~となった2枚。レコードの盤面を見て、えっ、URC、と驚いた。

URC=アングラ・レコード・クラブといえば、1960年代後半、既存の商業ベースに乗せにくかった音源を配布するために作られた会員制の組織で、フォークソングを全国に広める役割を果たした。

1969年当時、西岡たかしは『五つの赤い風船』の一員としてURCからレコードを発表するかたわら、ソロ名義でこのシングル2枚を発表。『秘密結社○○教団(人類頭脳進化後退破滅破壊促進倶楽部)』といった音楽プロジェクトにも参加しレコードをつくっている。他にもURCでレコーディングディレクター、アート・ディレクターまで務めていたというので大活躍だ(上のシングル2枚も西岡自身がジャケットを手掛けたらしい)。

www.youtube.com

URS-0006『いやなやつ - ボクを郵便で送りましょう』

URC第3回配布レコード(1969年6月)。「ちょっと眠たいな」と笑いながら歌う後ろで、車のクラクションや風切音が入っている『ボクを郵便で送りましょう』。なんとなく、レコードというよりボイスメッセージを聞いているような感じになる。

『退屈なうつり変り』は、詩を朗読したテープを遅回しした上にピアノや笛などの音がランダムに散りばめてある。周りで奇妙な現象が起き続けているのに、ギターだけは絶えず穏やかに鳴り続けている。その流れで『ポケットは空っぽ』に続く。歌というよりほとんど語り。過剰なエコーの中に歌声が埋没していくような終わり方が印象的だった。なんだろう。ずっと不思議だ。白昼夢?

youtu.be

URS-0010『砂漠/森・ふくろう』

URC第5回配布レコード(1969年10月)。『森・ふくろう』は、過剰なエコーを施したギターと深い呼吸音が2分近く続く始まり方がすごい。

『砂漠』がすごかった。だんだん爆風が迫ってくるような音がプツリと切れて、ギターと歌が始まる。シンプルなメロディーと不安になる歌詞に、不規則に鳴る鉄琴の音。不気味なくらい美しい静けさを保った演奏。何も考えずに聴いていると、そのうち意識が「この世界とは違う世界へ行」ってしまうかもしれない。

www.youtube.com

 

こうした録音への関心、再生装置を楽器のように使う実験精神は、翌年にアルバム『溶け出したガラス箱(吐痙唾舐汰伽藍沙箱)』での大げさなピッチの揺らぎ、演奏を強制カットしたあと次の音がゆっくり立ち上がる⋯⋯といった大胆な演出に活かされ、1971年には多重録音を駆使して楽器とソロとコーラスを一人で演奏・録音した楽曲(『そんなに愛が欲しいのなら』『気ままな暮し』⋯⋯五つの赤い風船『ソロアルバム』に収録)へつながったんだと思う。

ただ、『溶け出した~』は音響・編集技術を音楽にフィルターを掛ける要領(今の音楽なら珍しくない表現)で使っているし、『そんなに愛が~』は『HOSONO HOUSE』的宅録サウンドに親しみがある人なら、かなりとっつきやすい内容だと思う。

そう思うと、やっぱり、時間感覚を意図的に歪め、語りやおしゃべりに楽器の音を「衝突」させて作ったような4曲(曲?)は、突き抜け方がすごい。サイケデリックとか、フォークとかそうした枠組みで聴くのはもったいない気がする。多分。こういうレコードをまだワンコイン(送料別)で買えるんだ。いい時代だ。まだ。

 

1969年に会員限定でレコードを配布するところから始まったURCは、会員申込が殺到したため、その年のうちに一部タイトルの市販を開始。1970年からは市販レーベルに移行した。

今回の2枚のシングルは、どちらも活動初期の会員制時代につくられた。楽曲はもちろんジャケットに至るまで関わっていたアーティストの感覚が反映されているわけだから、レコードを買うというただの消費活動を超えた何かを受け取った気持ちになれる。当時会員になってこのレコードを手にした若者たちのワクワク感はいかほどだったろう。URC設立後、申込が殺到したのが少しわかる気がする。

今年聴いた音楽:2026年2月

こんにちは2月。さようなら2月。来たと思ったらもう終わっていた2月。

皆さん、いかがお過ごしですか?私はといえば、値上げする前にマクドナルドに駆け込み、ありふれた物を頼んだあとで「このあと値上げするならビッグマックとか行っときゃよかったな」なんてしょっぱい考えごとをしたひと月でした。

我ながら、もうちょっと、こう、ないんか?

レコードは色々買いました。楽しいものから、わからないものまで。色々!

Lynn Cornell「Moanin'」

www.discogs.com

英国のひとが歌っています。シングル盤でだけ出た一枚です。渋い。しかもこの曲はシングルのB面なんですよ。さらに渋い。

良いですよ。出だしがスキャットですもの。良いに決まってる。

レコードに針を落とし、しばしの静寂ののち浮かび上がる、ミステリアスなスキャット。闇に立ちのぼるたばこの煙のような声。ドラマの始まりですよこれは。

www.youtube.com

歌とピアノの掛け合いという静かな立ち上がり。スモーキーなサックスとドラムのブラッシングがこれまたほの暗く危険なかっこよさ。曲の中盤にサックスと歌が絡むところがあるわけですが、こんなに静かで、しっかりホットなクライマックスがあっていいんでしょうか。いいんですね。たまりませんね。

そんな調子でウキウキしているとあっという間に終わってしまうのです。寂しい!でもこのくらい短いほうが潔くていいのかも。これがシングルサイズ。

ところで、リン・コーネルは、「ヴァーノン・ガールズ(The Vernon Girls)」というコーラスグループの一員としてキャリアをスタート。このグループ、「ヴァーノンズ・プールズ」(Vernon's Pools)という、サッカーの試合結果で賭け事をする会社の社内活動の一環で生まれたものらしい。さすがイギリス。

1960年にソロ活動を開始、その年に映画「日曜はダメよ(Never on Sunday)」の主題歌をカバーしたシングルがヒットしたのだそう。70年代にはThe Pearlsというボーカルデュオを結成し、そこでもなかなかのシングルヒットを飛ばしたようですよ。

 

Archie Shepp「Day Dream」

www.discogs.com

これまで、アーチー・シェップは「Attica Blues」を知っているだけで、どことなく私にとって縁遠い存在でした。たまたまYouTubeで見た海外ニキが「Masterpiece」だと語った曲『Blasé』が不思議としっくりきたのをきっかけに、彼の音楽を聴いてみようと思い立ったのでした。

そこで手に取った一枚がこのLP。いわゆるジャズのスタンダード(定番曲)をやってるアルバムです。日本のレコード会社が企画したアルバムで、2026年2月現在、このアルバムは日本でしか出ていないようです。

一曲目の『Don't You Know I Care』がすごかった!ソプラノサックス。極楽につながる蜘蛛の糸のように細く、天使の羽のように舞い上がる。悶えながら絞り出した人間臭い音も、やがてまろやかに空気中に溶けていく。全身全霊でコントロールされた音色が、天にも昇るような心地よい時間へ誘ってくれます。この一曲だけでもレコード買ってよかった!と思えたほど素晴らしい演奏。

youtu.be

続く『Caravan』は一筋縄ではいきません。切れ切れなサウンド。原曲のメロディーを分解し、音楽として成立するギリギリのタイミングに音の断片を配置したような調子でテーマを演奏すると、そのまま猛烈な音数のソロになだれ込みます。

ここまで約1分。音のジェットコースター。ひねり、ねじれ、自らがかき回した時空の渦を突っ切っていくようなソロ。ここまできたらあとは何が起きたかわからないままひたすら圧倒される時間。怒涛!

『Satin Doll』は、クラッシュしたF1カー並みの勢いでピアノへ突っ込んでいくサックスに驚くものの、その後は原曲のメロディーを意外と(?)崩さずジェントルな展開に。ソロでは激しく縱横に駆けまわりつつ、リズムに合わせて体が揺れる=スウィングする感覚は温存されているのが面白い演奏です。

youtu.be

その流れで?BYGレーベルのLPを、フランス盤と日本盤(東宝芸音)それぞれ手にする機会を得ました。貴重(当社比)。
フランス盤は小さいんですね。30cmないんでないかしら。ザラっとした、造りから受ける印象そのままのラフな響きは、激しい演奏をよりホットに聴かせてくれます。演奏の熱気がそのまま盤に焼き付いたような音というか。音楽というより「事件の記録」に立ち会っているような感覚になります。ただ、ジリつくようなバックグラウンドノイズがあるのは保存状態の問題だけではなさそう?
対して東宝芸音の日本盤はノイズが少ないのはもちろん、音が滑らか。元々はこんなに丁寧に録音されていたのね、とうっとりしながら聴きました。
でもやっぱりフリージャズは、私にはいまだ難しく、わからないこともある領域だなあ、という感想。まだまだわからないことがたくさんだ!

今年聴いた音楽:2026年1月

こんにちは、2026年です。生きています!

J-WAVEが深夜にやっている『COMMON GROUND』という番組、Spotifyでプレイリストを作って送れるんですね。現代だなぁ。

www.j-wave.co.jp

今月、私が作ったプレイリストがなんと採用(放送)されまして。うれしかったなあ。私のプレイリストをどう聴いてどう感じたか、曲のつなぎ方から垣間見えるのが面白かったし、合間合間にジングルが入るとラジオ!って感じ出ますね。楽しい。ラジオ番組のはがき職人になる気持ちが少し分かりました。プレイリスト職人になりたいな。

 

Billy Harper「Soran-Bushi, B.H.」

www.discogs.com

アメリカ人がソーラン節をサックスでやってる。イイネ!という軽いノリで買ってきたLP。1977年録音。ポスト・コルトレーン的演奏なのかしら。ストレートで大胆な表現が素晴らしく良かった。

1曲目の「Trying to Get Ready」ではドラマーが2名いるらしい。ツインドラムが生み出す複雑なリズムが「音の壁」を作り出し、ビリー・ハーパーの引き締まった筋肉質な音色が、とてつもないスピード感で突き抜けていく。アルバムの最初からこういう音楽をぶつけられるとは思っていなかった。嬉しい驚き。ノックアウト。

曲の半分くらいサックスのソロが占めているんじゃなかろうか。サックスソロからそのままのエネルギーで曲のテーマに戻る。その流れはムダがなく自然。こういう細かい部分も聴き逃したくない。大音量で聴くとたまらない。

肝心の「ソーラン節」。思ってる3倍くらい(当社比)スマートかつエネルギッシュな演奏だった。これってモーダル?っていうか君歌うんか!「エンヤサドッコイショ」!?歌上手いな!?

2曲目の「Loverhood」はアヴァンギャルドなフレーズも飛び出すサックスの無伴奏ソロ。でも決まったフレーズが要所要所で挟まってくるので、全く無計画というわけでもなさそうだ、という。こういう自由度の高い演奏で、聴く側が一方的にエネルギーを押し付けられる体験をしておしまい、という印象にならないのがすごい。

このアルバムは全体を通して楽曲のコンセプトと言うか枠組みがある程度あって (ソーラン節という明確なテーマがあったからなのかもしれない)、そのなかを楽曲ごとに特色あるエネルギーで満たしていくような感覚。決して無秩序に陥らないから、アヴァンギャルドなフレーズが飛び出してもすんなり受け止めることができる。

ちなみにビリー・ハーパー、ソーラン節がえらく気に入ったのか本作録音の約2年後にはフランスのレーベルで再びソーラン節を録音しています。

youtu.be

2025年のたのしかったこと

この記事は、「りんごぱいAdvent Calendar 2025」12月11日分の記事です。

 

みなさん、お疲れさまです。どんな一年でしたか?

わたしは、新しいものをどんどん取り入れていこう!という機運があった去年までと比べると、ことしはあまり冒険しなかった気がします。そのかわり「今まで取り入れたものは、この先の自分も必要とするかな?」という視点で考えることが多かった一年でした。だからどうした。

それはそれとして、今年の楽しかったもの・良かったもの・面白かったものを思いつくだけ書いてみようと思います。ほとんど全部食べものだな!

Teddi KingのオリジナルLP盤3種

これは食べない。詳細はこちらを参照:今年聴いた音楽:2025年5月 - udon_noodles

Teddi Kingという米国人歌手が1950年代に出したジャズのレコード。この3枚をはじめ、ことしはこの時代に出たレコードを買い集めるのが楽しい1年でした。

復刻盤が色々出ているのですが、やはり最初に出たものは印刷が鮮明でイイネ。文字のかすれやインク溜まり、当時どんな技術で印刷されたのかな?というのを考えながら見るのが楽しい!至近距離で凝視するほど癒される世界。

盤は、今のレコードよりもがっしりした厚みと重みがあり、ジャケットはニス加工がされていて濡れたようなツヤがあるのも1950年代米国盤のすてきなところ。

レーベル面(レコード盤についてるラベル紙)の発色が現行のものよりずっと鮮やかなのも良い!レコードをプレスするとき、ラベル紙も一緒に高温高圧にさらされるので、耐熱のインクや紙を使う必要があるらしい。このへんの技術が進展した今ではもう再現し得ない発色と紙質なのかも。

レコード集めに時間を費やした人間あるあるなのかはわかりませんが、「オリジナル盤が家にある」暮らしそのものが心の安定に繋がっているなあ、と感じます。恥の多い一日を送っても、「でも家に帰ればオリジナル盤があるし……」と思うと心が救われます。文字通りの財産。

 

ホットケーキミックスは説明書通りに作ると分厚く焼ける

ごめんなさい!私は今まで勘と雰囲気に頼ってホットケーキを作っていました。お店みたいな分厚いホットケーキを夢見ながら、家ではどら焼きの皮くらいの厚みが精一杯だった私。

それが、説明書きをよく読んでからホットケーキを焼いた結果

分厚い!明らかにどら焼きの皮を卒業している!

ちょっと気をつけるだけで、こんなに変わるんだ、という衝撃。私はいままで森永のホットケーキミックスの実力を引き出せていなかったんだ⋯⋯。

1.卵と牛乳は先によく混ぜておく

森永のホットケーキミックスは、牛乳(か水)と卵1個を使うのですが、これらをあらかじめよく混ぜておき、そこにホットケーキミックスを入れるんですって。

卵は白身の塊が残らないくらいサラサラになるまで混ぜておくと、その後の工程が楽になります。

今までボウルに入れたホットケーキミックスに卵を落とし、牛乳を流し入れていた私。どうせ混ぜるから一緒!と思っていたんですが、ぜんぜん違うみたい。理由は次に。

2.ホットケーキミックスは混ぜすぎない

ここ!一番!重要!胸に刻みたい。先にミックスを入れてから卵やら牛乳やらを入れてしまうと、ムラを無くそうとしてよ~く混ぜざるを得なくなるのですが、これがどらやき化の原因になっていたみたい。

いつも泡だて器を持ち上げたとき、ミックスがサラサラと、滝のように流れ落ちるまで混ぜていたのですが、すこしダマが残るくらいで混ぜるのをやめていいんですって。

3.中火であたため、弱火で焼く

料理音痴のわたくしは何かと強火に頼りがち。でもホットケーキは優しく焼いていこうね。

まずフライパンを中火であたためたあと、弱火にしてから生地を落とすといいらしい。ひっくり返すタイミングは弱火で3分くらいが目安。ひっくり返したあとの記事を凝視すると、どんどん膨らんでいくので楽しいですよ。

 

以上。この3点を意識した結果、家のホットケーキがガラっと変わりました。面白すぎる。科学!

失礼ながら、ホットケーキって「簡単だけど、お店ほど美味しく焼けないから⋯⋯」と、家で作ることを勝手に敬遠していたのですが、完全に違いました。カンタンで美味しい神食品でした。

詳しくは森永のページを参照のこと。皆さんもこれで分厚いホットケーキライフを!

www.morinaga.co.jp

 

モスバーガーの「ふんわりスフレパンケーキ」

www.mos.jp

またパンケーキの話ししてる。

11時から販売される時間限定の商品。味もさることながら、パンケーキを食べるぞ!という確固たる意思を持ってバーガー屋さんに入店する体験そのものが楽しかったやつ。

単品520円って意外といい感じのお値段かも。紅茶とセットで注文もできます。貴族のたしなみ。店の中みんなバーガー食べてるなか、ナイフとフォークを装備した客は私だけだった。楽しい。

うまいバーガーがあるのを知っていながら、あえてパンケーキに走り、バーガーを頬張る人たちを横目にシロップをかける時間。謎の背徳感があります。体験しないとわからない、このよろこび。みんなシロップかけてこ。心がリッチになりますよ。

で、モスってたま~に「モスバーガー&カフェ」なるスペシャルお店にぶつかることがあります。多分マクドナルド世界でいうマックカフェです。この店舗のパンケーキはもっとすごくて。

prtimes.jp

「ふわしゅわスフレ」という、声に出して読むだけで可愛くなれそうなお名前のパンケーキが出てくるんですね。このリッチ感で、パンケーキにメープルシロップホイップクリームまでついて単品590円~というお値段設定。何事?

残念なのは、私が住む東日本はモスバーガー&カフェの店舗がとても少ないこと。「東北のマンハッタン」ことビッグシチィー仙台をして2店舗しかありません。ゆえに、私はこのふわしゅわスフレをまだ食べたことがありません。悔しい。関東はもっと店舗があるはずです。出会えるまでガンガン行き当たっていただきたいところです。

 

守山乳業の「喫茶店の味 ココア」

www.fujimilk.co.jp

ほんとに美味しいやつ。濃厚なカカオの風味とリッチな乳味。後味にうっすら洋酒が香ります。こってり濃厚な飲みごたえのブルジョワドリンク。

氷を入れたグラスにこれを注いで、最後ホイップクリームをのせると、ほぼド●ールのココアになります。美味すぎる。願わくばラッパ飲みしたい。絶賛冷蔵庫にストック中。

SNSで「美味すぎる」とバズったからか、ことし夏ごろ品薄が続き、仕方なく他のメーカーの割と有名なココア飲料を買ったとき、驚きました。

今まではおいしく飲んでいたはずなのに、ただ板チョコかチョコレートソースをお湯でのばしたような味にしか感じられない!カカオの風味がない!水っぽい!安っぽい!強烈な不足感。守山乳業のココアが美味すぎて、ココア飲料に求める水準が上がっていた事に気付いたのでした。

恐ろしい飲み物。他のココアでは満足できないリスクを背負える人にはおすすめ。飲んでみてほしい。で、そのあと他社のココアも飲んでみてほしい。危険な飲み物。

 

おわりに

ことしの私のハッピーは、ホットケーキとレコードでできていたと言っても過言ではありませんね。割とマジで。

皆さん、お体には気をつけて、よいクリスマスをお過ごしください。そして分厚いホットケーキ焼いていきましょう。またね!