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基本的に誰も得をしない文面

misskey.10: よく聴いた曲2023

この記事はねむだる豆腐音楽会 Advent Calendar 2023 12月12日分の記事です。

 

2023年に私がよく聴いた音楽をSpotify上にまとめました。

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国も言語もリズムも違う10曲。そして、ことし特に繰り返し聴いた10曲。メモ程度の情報量ですが、どんな人のどんな曲なのかをここに書きます。

Chabuca Granda「Le Valse Creole」

ペルーが産んだ偉大な歌手・作曲家、チャブーカ・グランダ。

ヨーロッパとアフリカの文化を織り交ぜた「ムシカ・クリオージャ」と呼ばれる音楽で数々の名曲を残し、ラテンアメリカの音楽家へ影響を与えたといわれています。

1968年に録音し、後年発掘された音源。ここではフランス語で歌っています。

くだけた雰囲気と知性を感じる歌声が魅力的。

音楽再生アプリいわく「今年の2月に最も多く聴いた曲」。

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Sourakata Koité「Seremende」

西アフリカが発祥のハープの一種「コラ」。セネガル出身のソウラカタ・コワテは、ときにコラの弦を増やし、ときに金属ギター弦を採用するなど、実験的な試みでこの楽器の可能性を追求しました。1984年に録音されたこのアルバムでは、多重録音を駆使して豊かな音色を作り出しています。

短いフレーズを繰り返す演奏に身を預けるのがとても気持ちいい。時折聞こえる弦の振動音がシブい魅力を放ちます。

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Mulatu Astatke「Motherland」

エチオピア音楽とジャズの融合を試みてきた鬼才、ムラトゥ・アスタトゥケの2010年作品。

エチオピア謡曲の哀愁漂うメロディは「日本の演歌に似ている」と言われます。言われてみればたしかに。

私にとって演歌(や歌謡曲)は、こぶしやビブラートに加えオーケストラ、三味線、トランペットにエレキギター、民謡からマンボやハワイアンまで、ありとあらゆる要素を取り入れた『音のゴツ盛り』によって発展した音楽という印象(ムード歌謡の印象が強いのかも)。

音の余白を意識した、「引き算の美学」ともいえるスマートな演奏に、演歌が辿らなかったもう一つの可能性を見たような気持ちになりました。

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見砂直照と東京キューバン・ボーイズ, 初代 木田林松栄, 浅利みき「津軽甚句(ドダレバチ)」

1949年に結成され、現在も活動するラテン・バンドが、津軽民謡の名人と共演した1970年作品。初代 木田林松栄(津軽三味線は叩いて鳴らす、というイメージを決定づけた人物)の三味線もたっぷり聴けます。

裏拍に加えられたアクセントが、ゆらぎのある心地よいグルーヴを生み出しています。でもこれラテンかな?わからない。気持ち良いから細かいことはいっか!

アルバムのラストを飾る「津軽じょんから」もおすすめ。三味線とマンボの競演は「融合」というより「音の鍔迫り合い」のような迫真の熱演。9分半に及ぶ演奏なのでプレイリストに入れるのをためらってしまった……。

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Cecile McLorin Salvant「Doudou」

2023年作品。英語、ハイチ語、オック語(南フランスに伝わる言語)などを取り入れた、ジャズのくくりにとらわれないボーダーレスなサウンドを楽しめるアルバム『Mélusine』に収録。

ガーナ生まれ、ニューオーリンズ育ちの打楽器奏者ウィーディー・ブライマが鳴らすパーカッションが最高にホット。

ちなみに、ウィーディー・ブライマは去年キューピーマヨネーズのCMソングを担当したらしい。日本との意外な繋がり。

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Rita Payés & Elisabeth Roma「Durme negrita」

スペイン・カタルーニャ地方出身のRita Payés(リタ・パイエス)と、Elisabeth Roma(エリサベト・ローマ)母娘が2019年に発表したアルバム「Imagina」から。

「Drume negrita」は、キューバ出身のピアニスト、エリセオ・グレネ(Eliseo Grenet、1893~1950)が作った子守唄。ラテンアメリカで広く愛され、カエターノ・ヴェローゾが歌詞をブラジルの風物に置き換えて歌ったバージョンも知られています(参考)。

リタ・パイエスのハスキーな声も、エリザベト・ローマのギターも、とってもあたたかい。親密でありながら品もある雰囲気が素敵。

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María Teresa Chacín「De Repente」

ベネズエラ出身の歌手María Teresa Chacín(マリア・テレサ・チャシン)の1974年作品から。

この曲を書いたアルデマーロ・ロメロは、「オンダ・ヌエバ(Onda Nueva=新しい波)」という音楽スタイルを打ち出した人物。変拍子を巧みに活かしたゴージャスなサウンドは、ベネズエラ発のニューリズムとして、60年代後半から70年代前半にラテンアメリカや米国でムーブメントを起こしました。

アリ・アグエロなど、このムーブメントに参加したアーティストも参加。穏やかな幸福感のあるナンバー。

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Andy Statman「Barbara In The Morning」

1980年に発表したアルバム「Flatbush Waltz」に収録。

ブルーグラスは、20世紀の米国で発展したアコースティック音楽。バンジョーフィドル(バイオリン)を使った、ノリの良い2ビートのリズム、シンプルなコードと牧歌的なサウンドが魅力。

クラリネットマンドリンの名手であるアンディ・スタットマンは、1970年代頃から登場した、より現代的で複雑な音楽性を持った「プログレッシブ・ブルーグラス」の分野で活躍しました。

ジャジーマンドリンの演奏は、憂いを帯びつつも根は明るい感じが素敵。ソロでのメリハリの効いた繊細なテクニックも聴きものです。

1983年に長谷川きよしが日本語でカバーしたバージョンもあります(参考)。日本語詩を書いたのは浅川マキ。いい具合にやさぐれた歌詞、ブルージーなメロディーにぴったり(?)

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The Mighty Sparrow「Tour of Jamaica

カリブ海の国々、特にトリニダード・トバゴで発達した音楽、カリプソ

カリプソ・キング」の異名を持つシンガーソングライター、マイティ・スパロウが1963年に発表したこの曲は、ジャジーカリプソの名演として今もなお人気。

いとうせいこうがアルバム「MESS/AGE」でこの曲をサンプリングしたため、日本語ラップに詳しい方は聴き覚えがあるかも。

幸福感がぎっしり詰まったサウンド。涙が出そう。

12月にこの曲を収録したシングル盤が発売されました。ぜひご家庭に一枚。ちなみに私は買い逃しました。

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Chico Buarque「Bye Bye Brasil」

1980年に公開された映画「バイバイ・ブラジル」。軍事独裁政権下での急速な経済成長、アマゾンの森林にまで押し寄せる大開発の波、テレビの普及による(映画を含む)娯楽離れなど、当時のブラジルを取り巻く環境をユーモアを交えながら扱った作品。

その映画の主題歌がこの曲。公衆電話で親しい(愛しい)人と話す、という設定でブラジルの各地を点描します。

電話でのお喋りも終わりに近づき「最後のコインが落ちた」と歌うと、急き立てるように演奏の勢いが増していきます。「水彩画は変わってしまった」と、懐かしさや寂しさを抱えながらも明日に向かって生きていく気持ちを歌って曲はフェードアウト。サウダージってこんな気持なのかしら。

前述のアプリいわく今年の3月だけで130回聴いたらしい。多分今年一番聴いた曲。

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